今私たちが知らなくてはいけないこと
~福島第1原子力発電所の事故から1年~
九州の私たちにとって、一見対岸の火事のようにも見える福島第一原発の事故と放射能汚染。
毎日の生活で欠かせない電気はどこから来ているのか?
コンセントの向こうにある原発を考える。
2012年2月25日に行った、原発勉強会の内容のまとめです。
講師:清水功也さん(プロフィールはページ末)
◆福島第一原発の事故
整然と並んでいる原子力発電所。すでに1号機が爆発、さらには2号機の内部も破壊していたのですが、それでもプルトニウムを含む燃料を使っていた3号機の爆発はすさまじいものがありました。一瞬、建物の右(南側)に閃光が走り、轟音とともに爆発、その噴煙は300メートルほどに達しました。中部大学武田邦彦教授のホームページより引用
◆原発のしくみ ー原子炉は ヤカンの様なものー
<原発のしくみ>
水の入ったヤカンにウランを入れて
ウランからでる熱でお湯を湧かし
その湯気で発電機のプロペラを回すようなもの。
(参考:「ストップ浜岡原発」の図)
・原発自体を動かすための多大な電力が必要(原発の燃料”濃縮ウラン”を作る、水のくみあげ等のため)
・建設、解体、廃棄物処理作業などの燃料として石油が必要
という事で、実は効率が悪いのです。
◆放射能ゴミについて 〜1年で広島原発1000発分!?〜
原発から出る放射能汚染ゴミ。
全国の原発から1年に広島原発1000発分の低レベル放射性廃棄物が出る。
この日本の放射性ゴミの処理は地下300メートル以上に埋める地層処理で検討中だが、候補地、詳細ともに処理方法はまだ決まっていない。
<参考>
原発の原子炉がたった4基のフィンランドは高放射性廃棄物が10万年後に無害になると想定して地下埋蔵場所の建設に着手。
(フィンランド4基分でさえ、広大な場所が必要。日本には現在54基の原発があります。)
(ドキュメンタリー映画”10万年後の安全” 公式ページ)
(参考:各国の放射性廃棄物処理の状況)
◆原発がなくても電力の供給は可能か?
現在、全国54基中稼働はたった1基。 なのに電気は止まらず、生活は継続できている。
◆原発の真のコスト 原発は低コストなのか?
原発はコストが安いと言われているが、実は保険を含めての計算はされていない。
もし保険と保障を含めて計算すると、
原発の電気は1キロワットあたり最大8000円。
節電中のある一家の1ケ月の電気使用量は191キロワット(=4890円)
この計算によると1ヶ月分の電気料が191kw×8000円=152万円。
原発=低コストとは言いがたい内容です。
◆原発事故と放射能汚染
・メンタル汚染マップ(後日掲載します)
自分の住んでいる場所はなんとなく大丈夫だろう と人々が思っている様子がわかります。
また海外の人からすれば日本全てが汚染されていると思われているようです。
◆チェルノブイリ原発事故後の人体への影響
25年前にソ連で起きたチェルノブイリ原発事故。
人体への影響はすぐには出ず、5年後以降に特に子供に甲状腺がん、小児白血病などの発生率の大幅な異変が発生。
付近ベラルーシの小児甲状腺がんは事故後9年間で45.5倍に増加。
チェルノブイリエイズ
チェルノブイリ原発事故後に生じた様々な症状や病気に苦しむ人が今も多い。
・症状: 風邪を引きやすい 鼻血が出る 異常な疲労感や倦怠感 アレルギーの悪化 紫斑 吐き気 頭痛 めまい 骨の痛みなど
日本では福島原発の事故後、千葉や東京でも
鼻血が出る、出血が止まらない、頭痛、腹痛、肺炎など、異常を訴える事例がじわじわ増えています。
◆20ミリシーベルト問題
福島原発事故後、政府は年間被ばく20ミリシーベルトまでは大丈夫、という発表をしたものの、市民や有識者の強い抗議により、その基準を1ミリシーベルトに大幅に訂正。(参考:産経ニュース記事)
抗議でころころ変わる基準、政府の態度。
成長期の子どもたちの放射線感受性は、成人の2〜3倍である。
<年間20ミリシーベルトというのはどんな数字?>
3.11以前は原発労働者(成人)の年間許容量だった。
おおむね累積50ミリシーベルトを超えると体調が悪くなるといわれている。
(参考:労災が認定された例)
年間1ミリシーベルトを超える地域(参考:毎日新聞記事)
◆すぐ近くの玄海原発に事故があったら?
・事故のシュミレーション図(後日掲載予定)
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/genpatu/GotoYoko.pdf
避難勧告地域(緩い基準と 厳しい基準)
(図 5)晩発性ガン死の多く生じる場所(60°75°方向)
(図 6)長期的に居住不可能となる範囲
◆足るを知る
俳優 渡辺謙さんの ダボス会議でのスピーチの抜粋
”「国は栄えて行くべきだ、経済や文明は発展していくべきだ、人は進化して行くべきだ。」
私たちはそうして前へ前へ進み、上を見上げて来ました。
しかし度を超えた成長は無理を呼びます。
日本には「足るを知る」という言葉があります。
自分に必要な物を知っていると言う意味です。
人間が一人生きて行く為の物質はそんなに多くないはずです。
こんなに電気に頼らなくても人間は生きて行けるはずです。
「原子力」という、人間が最後までコントロールできない物質に頼って生きて行く恐怖を味わった今、
再生エネルギーに大きく舵を取らなければ、子供たちに未来を手渡すことはかなわないと感じています。”
■講師プロフィール
清水功也(SHIMIZU Isaya)
1975年 和歌山県生まれ。明治学院大学国際学部国際学科卒。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修士課程修了。
専門は平和教育(紛争問題/平和構築)、教科教育法(社会・公民科)。元私立高校専任教諭 (在職期間6年)、元東京女子大学非常勤講師。
日本平和学会会員/21世紀社会デザイン研究学会会員。
清水さんの活動 立花ゼミページ
東日本大震災によって生じた東京電力福島第1原子力発電所の事故後、大量に放出された放射能の影響から、妻のお腹にいた子どもを守るため、昨年4月に東京都から福岡県に避難。飯塚市、福岡市などで原発講座のコーディネーター等を担当。